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by gonta_i
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by gonta_i | 2005-10-05 07:57 | インドネシア

『戦争の悲しみ』

『戦争の悲しみ』(バオ・ニン著,井川一久訳,めるくまーる,1997年.)
2005-09-03読了

読後感想

大学の夏休みはもう終わってしまったが、夏休みの間に読んだ本のなかでいちばん印象に残っているのが、ベトナム人がベトナム戦争を描いたこの小説。

ベトナム戦争を扱った小説というと、ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』が思い浮かぶ(これは村上春樹が翻訳している)。
アメリカ人の側から描いたベトナム戦争の小説は多くあるが、ベトナム人が書いたものとしてはこのバオ・ニンの作品が欧米諸国においても高く評価されているようだ。

ストーリーは、主人公である北ベトナム陸軍兵キエンが、米軍、南軍との死闘から命からがら生き残り、戦後、遺骨収拾隊員を経て除隊し、作家になるが、戦争のトラウマから逃れられず、精神の崩壊へと進んでいくというもの。

ボクにとっては、キエンが出征の挨拶のために義父を訪ねたとき、詩人でもある義父がキエンにかけた言葉が心に残った。というのも、彼は自分の貧しさを見せないような整った身なりでキエンを迎え、品格ある態度でこう話したからだ。


君は、そう、戦争に行くんだね。私には止められない。私は年寄りで、君は若い。止めたくても、止められないよ。

ただ、君にわかってほしいことがある。地上にいる者の義務は、何はさておき生きることだ。死んだり殺したりすることはないんだよ。でもまあ、君は前線で、あらゆる種類の人生を、人生の本質を味わうことができる。悪いことでなければ何でも貪欲にやってみることだね。人生に背を向けてはいけない。

一見立派な何かを証明するために自分で死んでみせようとしたり、他人に死ねと言ったりする馬鹿者たちには警戒しなさい。・・・

君は私たちがこの世に残す唯一の存在だ。君の母親、本当の父親、それから義父の私がね。そんなことがあっても生きのびて、必ずハノイに帰ってくるんだぞ。君の前には、まだ多くの歳月、楽しみと喜びと、その他多くのことを味わう歳月がある。
とにかく生きのびなさい。
君以外の誰に君の人生を生きることができるだろう。
(77-78頁)
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実はこの小説は、訳本をめぐっていろいろな論争があったようだ。そのことは詳しく知らないので、ここでは書かない。
だから、ベトナム語から訳したもう片方の翻訳も読もうと思ったが、絶版となっており、また大学の図書館にも区の図書館にもなかったので、あきらめた。
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by gonta_i | 2005-10-05 00:31 | 読書感想